事業所をバーチャルオフィスに移転したら、やるべき手続きがいろいろとあります。個人事業主と法人の場合で異なる部分もありますし、提出期限もある届出には注意が必要です。
そこで今回はバーチャルオフィスに事業所を移転する際にすべきことをまとめたので、参考にしてください。
1 個人でバーチャルオフィスを利用する場合
個人事業主として活動しているのであれば、バーチャルオフィスへ事業所を移転した際に行うのは税務署と都道府県税事務所、年金事務所への届け出です。
1-1 税務署で移転手続きをする
個人事業主として会社運営をしている人がバーチャルオフィスに事業所を移転したら、その変更に伴う届出書を管轄の税務署に提出します。
書類は所得税(消費税)と源泉徴収税に関するものとなります。
まずバーチャルオフィスの住所に移転してから1か月以内に、「個人事業の開廃業等届出書」を提出します。これは開業届として提出しているものですが、事業所を移転した場合にも提出します。
そして期限は決まっていませんが、所得税(消費税)の納税地異動に関する届出書も提出します。確定申告の時期までには提出するようにしましょう。
記載する内容ですが、書類には納税地と納税地意外の住所地・事業所を記載します。これまで自宅を事業所としていたならば、バーチャルオフィスの住所をそこに記載することになります。
今後もバーチャルオフィスを変更する可能性があれば、納税地は自宅にしたまま事業所にバーチャルオフィスの住所を記載すればよいでしょう。
しかしバーチャルオフィスの住所で法人登記をする予定があれば、納税地もバーチャルオフィスの住所にしておくと手間がかかりません。
さらに給与支払いをしている場合には、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も提出します。
1-2 都道府県税事務所への届け出をする
所得税に関する届け出を税務署に提出したら、次は地方税に関する手続きを行います。こちらは管轄の都道府県税事務所へ住所変更に必要な届出書を提出します。
1-3 年金事務所への届け出をする
国民年金に関する届け出をバーチャルオフィスの所在地を管轄している年金事務所へ提出します。
「健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」という書類を提出するので、健康保険に関する手続きも一緒に行うことができます。
この書類の提出期限は、バーチャルオフィスの住所へ移転してから“5日以内”なので注意しましょう。
1-4 取引先などへの通知
移転に関する必要な手続きを進めると同時に、取引先などへの通知も行っておきましょう。郵便物などがあれば、新しい住所宛てに送ってもらう必要があります。
またバーチャルオフィスを契約した際に固定電話番号を貸与してもらったならば、その電話番号も知らせます。取引に支障が出ないように、事前に周知しておくとよいかもしれません。
1-5 郵便局への手続き
事業所を移転したら、郵便物の送付先も変更する必要があります。郵便局で転居・転送サービスに申し込んで、これまでの住所に送られる郵便物は新しいバーチャルオフィスの住所に転送してもらうようにしましょう。
1-6 銀行など金融機関への手続き
個人事業主として仕事をしている場合、銀行口座も個人のものを使っています。そのため事業所を移転しても自宅が変わらなければ、特に変更手続きをする必要はありません。
2 法人でバーチャルオフィスを利用する場合
もし法人として活動しているのであれば、事業所をバーチャルオフィスに移転するとやるべきことが多くなります。
2-1 税務関係は個人と同じ
法人として事業所をバーチャルオフィスに移転した場合、税務署と都道府県税事務所への届け出は個人と同じです。納税地も自宅にしておくことは可能です。
ただし個人での申請と異なるのは、法人の場合には「登記事項証明書」も必要になるということです。これは法務局で移転登記をした際に発行してもらいます。
2-2 法務局での移転登記が必要
個人事業主とは異なり、法人の場合には事業所を移転すると移転登記が必要になります。しかも会社法で移転してから2週間以内に行うことを義務付けられています。
これを怠ると、100万円以下の過料に処されるので注意しましょう。
さらに大事なことは、行政機関への移転届提出期限は年金事務所のようにもっと早いものがあることです。そしてその際には、法務局で発行してもらう登記事項証明書を一緒に提出しなければなりません。そのために実質的には、2週間という余裕はないので注意が必要です。
2-3 定礎の変更が必要か否かをチェックすること
法務局で移転登記の申請をする際に、定礎の変更もする場合があります。もし管轄の違う法務局で申請するのであれば必須ですが、これまで事業所のあった市区町村と同じ地域にバーチャルオフィスを借りて、なおかつ定礎には所在地を最小行政区画までしか記載していなければ、定礎の変更は不要です。
2-4 法務局への申請には収入印紙が必要
法務局へ移転登記の申請をする際に、収入印紙が必要になります。同じ管轄の法務局であれば30,000円で済みますが、管轄の異なる法務局でそれぞれ申請するとなると30,000円×2=60,000円となります。収入印紙は法務局内でも購入できます。
2-5 登記事項証明書をもらう
移転登記を申請すると、登記完了予定日を記載したお知らせを受け取ります。早くても数日かかるので、予定日になったらすぐに法務局へ足を運ぶようにしましょう。無事に登記完了していれば、登記事項証明書をもらえます。
この登記事項証明書は税務署など複数の行政機関で必要となりますが、この場合はコピーで構いません。法務局では原本を1通もらえば大丈夫です。
ただし、その種類は「履歴事項全部証明書」にしておくとよいでしょう。他に現在事項全部証明書などもありますが、変更届を提出する際には移転している事実を証明する必要があるからです。
2-6 労働基準監督署などへの届け出
もし労働保険(労災保険)に加入しているのであれば、「労働保険名称・所在地等変更届」を行う必要があります。
さらにハローワークへも「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。その際には労働基準監督署への届出の控えを必要とする場合があります。
2-7 銀行など金融機関への手続き
個人での移転と異なるのは、この金融機関への手続きが必要になることです。法人名義の口座があれば、その住所を変更しなければなりません。
手続きの際には通帳と口座の届出印、登記事項証明書と本人確認書類が必要になります。
またクレジットカードなどを利用していれば、その会社へも手続きをすることになります。他に融資を受けている金融機関があれば、忘れずに変更手続きを行っておきましょう。
2-8 契約関係に関する手続き
個人で取引先と業務上の契約をしていれば、自宅住所を使っていれば特に手続きは必要ありません。しかし法人として何かしらの契約を交わしているのであれば、事業所を移転したことによる手続きが必要です。
あらたに契約書を作成したり、変更契約を締結したりする必要はないでしょう。しかし場合によっては相手と覚書を交わすこともあるので、早めに連絡することが大事です。
2-9 パンフレットなどを再作成する
パンフレットや名刺を作成しているのであれば、新しい住所で再作成しておきましょう。もちろんホームページなどのサイトも情報を更改しておきます。
おわりに
事業所をバーチャルオフィスに移転すると、やることが多いことがわかります。特に法人の場合には、最短で5日以内に手続きが必要なところがあるので、すぐに法務局に申請するようにしましょう。