バーチャルオフィスの市場規模はどれくらい?

バーチャルオフィスの市場規模はどれくらい?

都市部を中心に増加しているバーチャルオフィスはどの程度の市場規模となっているのでしょうか。その背景となる労働人口の構成比率やバーチャルオフィスを取り巻く技術革新によって、これからの市場規模はさらに広がっていくことが考えられます。

1 個人事業主の増減からみる市場規模

まず現状でバーチャルオフィスにどの程度の需要があるのかを調べて、市場規模を推測していきます。

1-1 バーチャルオフィス市場を支えるのは個人の起業

バーチャルオフィスを必要とするのは、多くが起業して間もない(あるいは将来起業を考えている)個人であると考えられます。リーマンショック後に落ち込んだ開業率はその後上昇し、増加していた廃業率は低下しています。

これは終身雇用の崩壊のほかに、働き方が多様化したことで、誰でも独立開業をしやすくなったことが理由と考えられます。

またコストを抑えることができるオフィスサービスも多く、レンタルオフィスやシェアオフィス、そしてバーチャルオフィスの供給により低コストで事業を始めることができるようになったことも寄与しているでしょう。

さらに本業と副業を含め、フリーランスとして働く人の数が増加して2018年にはフリーランス人口は1,000万人を越えています。しかしフリーランスの多くは収入が安定しないことに不安を持っていますし、誰もが仕事の確保には苦労しています。

1-2 信用度を必要とするフリーランスの需要でバーチャルオフィスは市場拡大も

仕事の確保に必要となるのは、実績とともに信用度となります。そのために自宅開業よりも、オフィスを構える方がクライアントを確保しやすいことから、フリーランスはさまざまなオフィスサービスを利用しています。

特に料金の安いバーチャルオフィスは需要が多く、また都市部で知名度の高いエリアには多くの需要が集まります。

フリーランスの本場ともいえるアメリカでは、実に労働人口の35%はフリーランスであるといわれます。2020年にはさらに増加し、50%を超えるとの予測もあります。

対して日本の場合は、労働人口のうちフリーランスは6人に1人の割合となっています。現在は労働環境が変化しているさなかとあって、今後はフリーランスの比率はさらに高まると考えられます。それに伴って、バーチャルオフィスの市場規模も拡大していくことが予測されます。

2 バーチャルオフィスの供給環境

2018年9月18日に発表された都道府県の基準地価をみると、地価の上昇が明らかになっています。この背景にあるのは、オフィスビルの需要が堅調であることが考えられます。特に東京都心のオフィスビルにおける空室率は2%台と、低い水準で推移しています。

2-1 コワーキングスペースの需要がバーチャルオフィスの増加に

このオフィス需要を支えているのは、シェアオフィスであると言われています。コワーキングスペースを利用する企業が増加していることを受けて、従来のオフィスフロアをシェアオフィスにするケースも増えています。

そしてそのシェアオフィスを利用するのは企業のほかにも、個人事業主がいます。シェアオフィスを利用する理由は家賃が安いことと、異業種のほかの事業主との交流がもてることがあります。

しかしオフィススペースを借りるシェアオフィスは、利用料金もそれなりに必要となるために、住所だけを借りることができるバーチャルオフィスへ利用者が流れることが推測できます。

コワーキングスペースでの業務が一般的になることで、バーチャルオフィスの知名度も高まり、手軽に利用できる土台ができるのではないかと考えられます。

一方でオフィスビルがその利用の効率化により、逆に空室率が増加することも予想できます。シェアリングエコノミーの潮流により、オフィスも必要な期間・用途・規模に応じて小口で貸し出せるようになっているからです。

2-2 シェアオフィスの増加もバーチャルオフィスの増加につながる

たとえば米国発祥のWeWorkは不動産を借り上げて必要な設備を整える形で、シェアオフィスサービスを提供しています。

フロアを丸ごと借りる従来の使用方法の場合、内部で働くスタッフが外出すれば使用しない空間が発生します。しかし必要な時に必要なスペースだけを借りることができるシェアリングオフィスがあれば、無駄に借りるスペースがなくなるので賃料を削減することが可能となります。

そしてその効率化によって、普段は使用しない会議室を含めてフロアを借りるといった無駄がなくなります。その結果、使用しない空間は空室となって、テナントがつかなくなる可能性が出てきます。

このように空室となったスペースはシェアオフィスに転向するケースもありますが、バーチャルオフィスの貸会議室としても貸し出すことが考えられます。

つまりシェアリングオフィスが普及することで、バーチャルオフィスの供給も増えていくというシナリオが考えられるわけです。

政府が進める「働き方改革」では、テレワークの推進が明記されています。つまりICTを活用したシェアオフィスがコワーキングスペースの需要につながると考えられるということです。

「ICT」とは、IT技術を使ってコミュニケーションを円滑にする技術です。そしてこのICTというキーワードは、海外におけるバーチャルオフィスのあらたな需要を生み出しています。

ICTを活用すれば、コワーキングスペースのような実質的な空間を持たないバーチャルオフィスでも、シェアオフィスを使う場合と同様の働き方ができるからです。

3 世界の動きからみる今後のバーチャルオフィスの市場規模

従来のように、単純にコスト削減のためにバーチャルオフィスを利用するという目的以外に、企業のコスト削減と業務効率化のために利用する動きが海外で見られるようになっています。

たとえばXp Realtyという会社は、バーチャルオフィスを利用した新しいサービスを提供しています。

これは日本で現在提供しているバーチャルオフィスのように、単に住所を貸し出すというものではありません。これは文字通り、バーチャルな会社の中で社員のアバターが集まり、会議を開いたり研修を受けるといったことができるサービスになっています。

大事なポイントは、遠隔地にいるスタッフがアバターを使って、「まるでその場にいるように」出社できるということです。社員間のコミュニケーションも取ることができますし、物理的なオフィスはもはや必要がなくなることを意味します。

このバーチャルオフィスシステムを導入することで、どのような場所に住んでいても、実際に出社することなく「会社で働く」ことが可能となります。もちろんバーチャルオフィスで郵便を受け取ったり、あるいは電話を受けるといったことができます。

このような動きがこれからバーチャルオフィスの市場規模をさらに広げることにつながると考えられます。もちろんこれはまだ実用段階ではありません。

しかし日本の働き方改革や介護問題などの背景を考えると、住む場所に縛られることなく自由に働くことができる社会作りに、バーチャルオフィスが必要とされるのではないかと思われます。

まとめ

フリーランス人口の増加と開業数の増加傾向をみると、今後はバーチャルオフィスの需要はさらに増えていくことが考えられます。またアメリカでの革新的な技術の投入のように、個人ではなく企業もバーチャルオフィスの導入を検討するようになることを考えると、今後はまずまずその市場規模は拡大していくことが予測できます。

WeWork
http://www.reinet.or.jp/pdf/fudoukencolumn/vol201801.pdf#search=%27%E6%9D%B1%E4%BA%AC+%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9+%E7%A9%BA%E5%AE%A4%E7%8E%87%27


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2006年から営業開始:Karigo

自身も挑戦者でありながら、フリーランスなどの個人事業主などの挑戦者を支援する指針の元、2006年8月より営業を開始しました。ローコスト起業を考えていたり、節税対策などにも非常に有効です。