【個人・法人】バーチャルオフィスを使って起業(開業)したら納税地はどこになるのか

【個人・法人】バーチャルオフィスを使って起業(開業)したら納税地はどこになるのか

個人事業主あるいは法人は、税金を支払うための納税地を申告する必要があります。そこでバーチャルオフィスで起業した場合に納税地をどこにすることができるのかを説明します。

1 個人事業主は基本的に自宅を納税地に

個人事業主が起業(開業)する場合、バーチャルオフィスを利用しても納税地は原則的に自宅になります。

開業届(正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」)を提出する際は、納税地に自宅住所を記載して、「事業所」の欄にバーチャルオフィスの住所を記載します。

自宅を納税地とすることで、確定申告書は自宅地域を管轄する税務署に提出することになります。たとえばネット販売をしている個人事業主が自宅住所を使いたくないためにバーチャルオフィスを利用していても、申告は自宅近くの税務署で行えることになります。

個人事業種が確定申告する場合、毎年216日から315日(年によって変わる場合があります)の間に納税地を管轄する税務署に申告書を提出します。所得税はその申告期限内に一括で納付し、住民税は翌年1月までに4回に分けて納付することになります。

2 個人が事業所を納税地にするための手続き

所得税と消費税の納付通知書は納税地として申告した住所に届きます。もし自宅ではなくバーチャルオフィスの住所に送付して欲しいのであれば、納税地はバーチャルオフィスの住所にすることができます。

実際の業務は自宅を拠点としていても、バーチャルオフィスの住所はサイトHPに記載するためだけに利用していても、納税地はバーチャルオフィスの住所にできるということです。

ただし、開業届を提出すると同時に「納税地の変更に関する届出書」も一緒に提出する必要があります。その場合、自宅住所エリア管轄の税務署とバーチャルオフィスの住所管轄の税務署の両方に変更届を提出します。

3 自宅とバーチャルオフィスとで納税地が違うと何が変わるのか

納税地は自宅でもバーチャルオフィスの住所でも、どちらにしても納付する税金の金額に変わりはありません。確定申告をする税務署が管轄によって変わるくらいです。

住民税に関しても変わりはありません。個人事業主は住民税が均等割と所得割それぞれで計算されて納税額が決まります。所得割は前年の所得に応じて計算されますが、均等割は自宅あるいはバーチャルオフィスのある住所のある地域によって決まります。金額は5,000円から6,200円程度です。

注意が必要なのは、開業届に記載している事業所ごとに均等割が発生することです。複数の事業所があれば、同じ都道府県内でも区が違えばそれぞれに課税されます。

経費の計上に関しても、納税地をどちらにしても必要な経費は計上できます。たとえば納税地をバーチャルオフィスにしても、自宅の賃料を按分によって経費に組み込むことが可能です。按分とはどの程度の時間を自宅で作業したかに応じて、その比率により賃料の何パーセントかを経費にするということです。逆に自宅を納税地にしていても、バーチャルオフィスの料金をすべて経費として申告することができます。

4 法人は事業所住所を納税地に

個人事業主とは異なり、法人の場合には納税地は法人の本店所在地あるいは主たる事務所の所在地になります。もし法人登記をバーチャルオフィスの住所で行っているのであれば、開業届には納税地にバーチャルオフィスの住所を記載します。そのほかの居住地に自宅住所を記載することになります。

もし法人登記を自宅住所で行ったならば、納税地は自宅になります。自宅が賃貸物件であり事務所としての使用が不可とされるならば、バーチャルオフィスの住所で法人登記をすることになるでしょう。あるいは自宅住所を公開したくない場合も同様です。

しかし税務上の解釈として、事業の拠点とは異なる場所を法人の本店とすることは憂慮すべきこととしている点には注意しましょう。法人税法第181項によれば、納税地が法人の事業または資産の状況からみて不適当と認められる場合には、納税地の所轄国税局長は納税地を(適切な場所に)指定できる、としています。

実際にそのような指定を受ける例はあまりないので、気にする必要はないかもしれません。ただしそのような条項が法人税法にはあるということを頭に入れておくとよいでしょう。

5 法人でも納税地を自宅にすることは可能

法人の納税地は本店または主たる事務所の所在地となっています。そしてバーチャルオフィスを借りても業務を自宅で行っていれば、自宅が主たる事務所になるので納税地とすることは可能です。もちろん自宅の住所で法人登記をしていれば、自宅が納税地になります。

注意が必要なのは自宅が賃貸物件で、法人登記をバーチャルオフィスの住所とした場合に納税地を自宅にした場合です。実質的に自宅で業務を行っているわけですし、税務署からの通知も自宅住所に届きます。しかも宛先は会社名となるので、賃貸契約の契約違反にならないかどうかを確認しておきましょう。

自宅を個人名で契約しているものの、会社名宛てに郵便物が届くとなれば問題が発生する可能性があるからです。前もって賃貸物件のオーナーに事情を説明しておくとよいでしょう。正式には法人名義で賃貸契約を交わす必要がありますし、家賃には消費税も加算されます。その意味では契約違反になりますが、事業内容や不特定多数の人が出入りするわけではなければ、説明することで納得してもらえることもあります。

6 法人住民税について

法人の場合も住民税を支払います。法人の地方税は主に3つ、法人住民税と法人事業税、地方法人特別税があります。申告書の提出先はそれぞれ違うので注意が必要です。

6-1 申告方法

地方税は法人税と同様に、決算日の翌日から2か月以内に確定申告書を提出して申告します。

その提出先ですが、法人住民税は市町村民税と都道府県民税に分かれます。前者は市町村役場に、後者は都道府県税事務所に提出します。

個人の場合には税務署へ確定申告をすれば都道府県税事務所へ連絡をしてくれます。

しかし法人の場合には、都道府県税事務所へ申告しなければなりません。そして税事務所も市町村役場も、納税地を管轄するところになります。

6-2 法人住民税について

法人住民税は都道府県民税と市町村民税に分かれます。さらにそれぞれ「法人税割」と均等割」とに分かれています。法人税割は法人税の金額に一定の税率をかけて算出しています。均等割は資本金などの金額や従業員の数によって金額が決まります。

6-3 法人事業税について

法人事業税は所得割と付加価値割、資本割の3種類があります。いずれも都道府県にのみ支払うものです。所得割は法人所得に税率をかけて算出します。付加価値割は給与などの金額に税率をかけます。資本割は資本金などに税率をかけています。

6-4 地方法人特別税について

地方法人特別税は法人所得割の金額に税率をかけて算出します。これは法人事業税の負担を減らして地方の財源にするという暫定的な税金でしたが、2019101日の消費税率引き上げに伴い廃止されて法人事業税に復元されることが決まっています。

7 法人事業税の申告と納付の方法

法人住民税のところで少し触れましたが、法人の場合には確定申告は事業年度終了(決算日)から2か月以内に申告します。法人事業税はその申告期間内に一括で納付することになります。

一括での納付が難しい場合、個人事業主のように分納を相談することも可能です。ただし事業計画などの詳しい聴き取りがあるので、税務署へ直接足を運ぶことも必要になります。その点も踏まえて、納税地を決めることが大事です。

8 バーチャルオフィスを納税地にする際の注意点

バーチャルオフィスの住所を納税地に指定した場合、確定申告はその管轄の税務署あるいは税事務所へ提出します。そのためにバーチャルオフィスの住所が自宅から遠く離れている場合には注意が必要です。

たとえば地方都市の自宅で業務を行う個人が都心のバーチャルオフィスを借りて法人登記した場合、そのバーチャルオフィスの地域を管轄する税務署に確定申告を出すことになります。もちろん申告書を送ってもらい郵送することもできます。しかし何か問い合わせがあった場合には、税務署に足を運ばなければなりません。そのために遠く離れている場合には注意が必要です。

おわりに

個人事業主は基本的に納税地は自宅に、法人はその事業所を納税地とします。バーチャルオフィスで法人登記をしていれば、その住所が納税地となります。ただし個人が事業所を納税地に、あるいは法人が自宅を納税地にすることも可能です。

確定申告書はその納税地を管轄する税務署あるいは税事務所、役場に提出するのでバーチャルオフィスの住所を納税地にする場合には注意も必要ですね。


全国35拠点のバーチャルオフィス
2006年から営業開始:Karigo

自身も挑戦者でありながら、フリーランスなどの個人事業主などの挑戦者を支援する指針の元、2006年8月より営業を開始しました。ローコスト起業を考えていたり、節税対策などにも非常に有効です。