個人でも法人でも手軽に利用できるバーチャルオフィス。その利用料はレンタルオフィスやシェアオフィスなどと比べると安いものですが、年間トータルで考えるとまとまった出費になります。このお金は経費として申告することはできるのでしょうか。
目次
1 バーチャルオフィスの利用料は経費にできる
個人事業主でも法人でも、バーチャルオフィスを利用するケースが増えています。自宅で仕事をしながらも、ほかにホームページなどに記載する住所が必要になるケースがあるからです。そのバーチャルオフィスの利用料は、確定申告で経費にできるのでしょうか。
1-1 事業を行うために要したお金はすべて経費にできる
バーチャルオフィスは住所を借りるだけなので、実体がありません。オフィススペースを借りるわけではないので、経費として認められるのか疑問に思う方もいるでしょう。
結論からいえば、バーチャルオフィスは実際にオフィス空間を利用するわけではありませんが、その住所の利用料金は経費として認められます。これは事業のためにその住所を利用しているからです。個人でも法人でも、それは変わりません。
バーチャルオフィスの住所はさまざまなことに利用できます。ホームページに記載したり名刺やパンフレットに記載したりと、個人としても法人としても何かと利用できます。そのような実績があれば、十分に経費として認められます。
開業届で納税地を自宅にしていてもバーチャルオフィスの住所にしていても、どちらでも同じように経費にすることができます。もちろん金額も同じですし申告方法にも変わりはありません。
1-2 バーチャルオフィスのオプションもすべて経費に
バーチャルオフィスにはさまざまな料金があります。毎月支払う基本料金のほかに不定期にオプションを利用することもあるでしょう。そのようなオプション料金ももちろん、経費として計上できます。
バーチャルオフィスの基本料金には、住所と電話番号のほかにもいろんなサービスが含まれることがあります。たとえば電話を転送するだけではなく、オペレーターが代わりに対応するサービスもあります。
あるいはバーチャルオフィスの住所に取引先の方が急に来社した場合、スタッフが対応してくれるサービスも利用できます。そのような複数のサービスを基本料金に含んでいても、すべてを経費として計上できます。
1-3 バーチャルオフィスの勘定科目について
バーチャルオフィスの利用料金は勘定科目をどうすればよいのでしょうか。ちなみに勘定科目とは、収益と費用それぞれについての分類項目を表します。財務諸表の中の賃貸対照表と損益計算書で使います。確定申告も白色と青色の両方で勘定科目を使います。
たとえば実際のオフィス空間を使用するレンタルオフィスの場合、勘定科目は「地代家賃」になります。シェアオフィスの場合には空間を割り当てられていないので「賃借料」です。一方でバーチャルオフィスの場合には「支払い手数料」とします。実際にビルの一室を借りることはないからです。
ほかにオプションサービスを利用する場合には、それぞれに合った勘定科目を選ぶことになります。たとえば郵便伝送をオプションで利用する場合には「通信費」に、秘書代行は「外注工賃」になり会議室なら「会議費」にするとよいでしょう。
もしこれらの複数のサービスを基本料金に組み込んでいるようであれば、一括して「支払い手数料」として申告すればよいでしょう。勘定科目は明確なルールがあるわけではないので、もし違っていても指摘されたら修正すれば大丈夫です。
2 実際には自宅で仕事をしている場合
バーチャルオフィスを借りても利用するのは住所と電話番号だけで、実際の業務は自宅で行うケースが多いでしょう。この場合でも経費として認められるのでしょうか。
もちろんこのようなケースでも、しっかりと経費計上できます。バーチャルオフィスの住所をホームページのサイトに記載したり、あるいは名刺やパンフレットで使用したりすることになるからです。
そして実際の仕事場となる自宅も、作業時間の割合分だけ賃料を経費として計上できます。あるいは部屋の面積に対する作業スペースも割合で「按分」して、家賃の何パーセントという形で経費にできます。
3 個人でも法人でも同じように経費にできる
個人でも法人でも、バーチャルオフィスの利用料はすべて経費として計上できます。仕事で使っている賃貸物件の自宅の家賃を経費にする場合には、厳密には申告方法が変わります。しかしバーチャルオフィスはそのような違いはありません。単純に利用料の金額をそのまま経費として記載すれば問題ありません。
4 開業届にバーチャルオフィスの住所を記載していない場合は?
自宅で個人事業主として開業届を提出しフリーランスとして働き始める方は多いでしょう。そのうちに自宅住所を公開したくないという理由などで、バーチャルオフィスを借りるケースも多いと思います。
この場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」でバーチャルオフィスの住所を記載する必要があります。しかし何かと忙しく、届出を出さないままで確定申告を迎えてしまったという場合はどうなるのでしょうか。
この場合、経費として認められない可能性が高いといえます。また経費として申告していながらバーチャルオフィスの住所が開業届に記載されていないとすれば別の問題も発生します。バーチャルオフィスのある市区町村には市区町村民税と都道府県民税の均等割額を支払う必要があります。それが未納であると指摘されることになるからです。
バーチャルオフィスの利用料を経費として計上するのであれば、開業届で住所を記載するのを忘れないようにしましょう。
5 領収書は必要?
確定申告を提出する際には添付しなくても大丈夫です。しかし税務調査が入った時には提出する必要があるので、一定期間保管しておく必要があります。個人でも法人でも、確定申告は白色でも青色でも行えますが、白色は5年間で青色は7年間の保管が必要です。
6 バーチャルオフィスを経費にしたら自宅の賃料は経費にできる?
個人でも法人でも、事業で利用するものはみな経費として申告できます。たとえば自宅で仕事をしている個人事業主の場合、賃貸マンションの賃料もインターネット料金も経費に計上できます。もちろん、賃貸契約違反とならなければの話ですが、電気代や水道料金までも経費になります。
ではバーチャルオフィスの料金を丸ごと経費として申告していたら、そのような自宅の料金などは経費にできるのでしょうか。実際に自宅で業務を行っているのであれば、しっかりと経費に計上できます。
ただし自宅はプライベートと仕事に分けて経費を計算する必要があります。たとえば1日のうち仕事をする時間がきっちり8時間であれば、家賃や電気代などは8÷24の3分の1だけ経費にできます。あるいは仕事場として使用するスペースに応じて按分し、経費を算出します。
仮に複数のバーチャルオフィスを借りていても、自宅の経費に影響はありません。またすべてのバーチャルオフィスの利用料をそのまま経費計上できます。
おわりに
バーチャルオフィスは個人でも法人でも、さらに納税地をどこにしていても利用料を確定申告の経費にできます。もちろんその領収書はきちんと保管しておくことが必要です。年間ではそれなりの金額になるので、少しでも所得を少なくするために役立つでしょう。