バーチャルオフィスを利用していると、時にその運用会社が倒産することがあります。借りていた住所や電話番号は使えなくなるので、早急に行うべき手続きなどがいろいろとあります。
突然の倒産にも慌てることがないように、やるべきことを詳しくご紹介します。
1 早急に行うべき手配
住所を借りていたバーチャルオフィスの運営会社が倒産してしまうと、会社の住所として使えなくなります。そこでまず早急に行うべきことがいくつかあります。
1-1 顧客などへの連格
契約していたバーチャルオフィスの住所が使えないとなれば、電話番号も使えません。取引のある顧客などには住所と電話番号が使えなくなった旨を早急に伝えなければなりません。
そのままにしておくと郵便物を今まで通りに送付してしまいますし、電話をかけてしまいます。郵便物は当然、送付先不明で戻りますし、電話はつながりません。
そうなれば取引先は不安になりますし、事態が収拾しても取引を継続しない可能性もあります。
ただし急に住所も電話番号も使えなくなると、すぐに代わりを用意できないこともあるでしょう。
そうなるとバーチャルオフィスを使っていたことを説明していなければ、相手に知られることになるかもしれません。
それでも、まず事情を説明して郵便物の送付は一旦中止してもらい、電話は自分の携帯番号などを知らせるなどの対処が必要です。
1-2 住所と電話番号の変更
早急に取引先などへの連絡を終えたら、新しい住所と電話番号を用意しなければなりません。もちろんすぐにオフィスを借りるわけにもいかないでしょう。
次のバーチャルオフィスを探す場合にも、良いところが見つかるかもわかりません。
バーチャルオフィスの住所で法人登記をしていたら、2週間以内に住所を変更した旨の申請をしなければなりません。
そこで一時的に自宅を会社の所在地にする方法もあります。ただし賃貸物件の中には事務所として使用することを禁止する場合があるので注意しましょう。
できる限りバーチャルオフィスなどで他のサービスを探すようにしたいものです。
1-3 サイトなどの手続き
新しい住所と電話番号を用意できたら、サイトや名刺などを変更します。取引先にも通知して、郵便物の送付を再開してもらいます。
法人登記をしている場合には、法務局で変更登記の申請を行います。
1-4 取引のある銀行やクレジットカードの金融機関での変更手続き
法人口座のある銀行や借入をしているクレジットカードの金融機関があれば、新しい住所の変更手続きをします。
他に日本政策金融公庫などを利用しているのであれば、同様に移転の手続きをしておきます。
1-5 事業許可を受けている場合には住所変更手続きを
事業内容によっては事業許可を受けているので、その許可を受けた窓口で変更届出書と登記事項証明書を提出します。さらに新しい営業所の写真を提出する場合もあります。
バーチャルオフィスでは事業許可が下りない業種もありますが、もしそのような業種で営業許可を受けているとすれば注意が必要です。
次もバーチャルオフィスを利用するとなれば、許可を受けられずに仕事を続けることが不可能になる可能性があります。
2 新しい住所を探す
顧客への連絡などが終われば、次は新しい住所を探します。特にバーチャルオフィスの住所で法人登記をしている場合、2週間以内という期限があります。
2-1 2週間以内の期限がある理由
バーチャルオフィスの住所で法人登記をしていると、法務局で住所移転のための手続きをする必要があります。そしてその手続きは移転してから2週間以内に行うことと定められています。
もし2週間以内に住所移転手続きをしなければ、「登記懈怠」とみなされて100万円以下の罰金を課せられます。
借りていたバーチャルオフィスがなくなってしまえば、必然的にその住所から転出したことになります。転出=住所移転となるので、その日から2週間以内に新しい住所を探さなければならないのです。
2-2 自宅住所を使う手もあるが
次の住所もバーチャルオフィスを利用するのも良いですし、あるいはレンタルオフィスなどを使うのも良いでしょう。しかし2週間以内に次の契約ができるかどうかはわかりません。
申し込んでからの審査もありますし、場所選びに迷うこともあるでしょう。
どうしてもすぐに新しい住所が見つからないという場合、一時的に自宅の住所を使うという手段もあります。ただしこの場合、注意しなければいけないことがあります。
賃貸物件には事務所としての使用を禁止している場合があることです。これは不特定多数の人が出入りするようになることを憂慮するからです。
防犯上、建物内の他の住人に迷惑をかけることになるので、たとえ形だけのものであっても許可されない場合があります。
もし自宅を会社の住所として使っていることがわかれば、賃貸契約を解除されることもあるので注意しましょう。
3 法人登記している場合の手続き
バーチャルオフィスの住所で法人登記をしている場合、運営会社の倒産から2週間以内に変更登記の申請をしなければなりません。
3-1 定礎の変更手続き
会社の住所を変えると、変更登記とともに定礎の変更も必要になります。しかし、定礎に会社の住所を市区町村まで記載していなければ、不要となる場合があります。
たとえば定礎に会社の住所を「東京都新宿区」とだけ記載していて、同じ新宿区内で新しい住所を使うのであれば、定礎を変更する必要はありません。
3-2 管轄の法務局で変更登記の申請をする
バーチャルオフィスの住所で法人登記をしていれば、その変更登記申請を法務局へ提出します。
管轄の法務局が同じであれば、そこで変更登記申請書と印鑑届出書、印鑑カードを提出して手続きをします。その際に登録免許税を3万円支払います。
もし転居先が別の管轄の法務局となる場合には、前の住所の法務局と新しい住所の管轄となる法務局の両方で手続きをしなければなりません。
登録免許税はその両方で支払うので、合計6万円が必要です。
4 税務上の手続き
法人登記している場合や個人事業主として活動している場合でも、どちらも税務上の手続きが必要になります。
4-1 管轄の税務署へ移動届を提出
法務局への変更登記が終われば、すぐに会社住所の管轄である税務署に登記簿謄本を提出して住所が変わった旨を報告します。
法人登記をしていない個人事業主も同様に、税務署への報告が必要です。所得税の他に都道府県税事務所へも移転届を提出して、都道府県税納付に関わる手続きをします。
4-2 従業員を雇っていれば市区町村役場へも変更届を
もし個人だけではなく従業員を雇っているのであれば(たとえば配偶者など)、その従業員が住んでいる市区町村へも会社住所の変更届を提出します。これは給与から住民税を天引きするためです。
4-3 日本年金機構へ変更届を提出する
個人事業主は会社の住所を変更した場合、日本年金機構へも変更届を提出します。その際には健康保険・構成返金保険事務所関係変更届出書が必要です。
提出期限は会社の住所を移転してから5日以内となっています。提出先は新しい会社の住所地域を管轄する年金事務所です。
おわりに
バーチャルオフィスの運営会社が倒産すると、その住所が使えなくなることで実に多くの手続きなどが必要になります。
問題なのはその期限が決まっているものがあるため、早急に次の住所を決めなければならないことです。不慮の事態に備えて、すぐに次の住所を決めることができるように用意しておくとよいかもしれません。