バーチャルオフィスはどのような職業でも利用できるわけではありません。犯罪につながる可能性があるものや、違法性があるものは申し込みを禁止するサービスもあります。具体的にどのような職業が該当するのかをご紹介します。
目次
1 バーチャルオフィスが利用を禁止する可能性が高い職業
2008年よりバーチャルオフィスを利用するためには、身分証明書を提示することが必要になりました。これはバーチャルオフィスが、犯罪収益移転防止法の規制対象になったからです。
その理由はバーチャルオフィスがマネーロンダリングなどの犯罪に使われる事例が多いためですが、運営会社もそのチェックは厳しくしています。バーチャルオフィスの住所を検索すれば、そのような犯罪に利用された場合にはすぐに判明するからです。
そのために、決して犯罪に利用するつもりではなくても疑わしいと判断される業務では、バーチャルオフィスを利用することはできません。ではどのような業務がその対象になるのでしょうか。
1-1 利用規約で禁止している業種
バーチャルオフィスの利用を禁止する業種は運営会社によって異なります。会社によっては可能であったり、不可能であったりします。
そこで少し厳しく申し込みを拒絶しているケースを例に、どのような業務が利用すると問題になりそうなのかをご紹介します。
まず士業は禁止とするサービスが多いようです。具体的には行政書士・税理士・公認会計士・社会保険労務士・弁護士などがあります。もちろん士業はきちんとした職業です。
しかしこの中には営業するために登録する際に、事務所に関する要件を定めているものがあります。
バーチャルオフィスはその要件を満たさない可能性が高いので、最初から申し込みを断るサービスも少なくありません。
他に宅地建物取引業・旅行業・貸金業などの目的で申し込むことは不可とするケースもあります。
顧客情報を扱うような職種は、バーチャルオフィスの利用は難しいと考えてよいでしょう。個人情報をきちんと管理できる事務所が必要だからです。
そして営業許可を得るためには、実際に使用する事務所で登録しなければなりません。たとえば登録は自宅の住所で、営業活動はバーチャルオフィスの住所で行うということはできません。
1-2 東京都公安委員会認定業種
東京都公安委員会では特定の業種における営業許可を与えています。その認定業種はバーチャルオフィスで行うことができないケースがあります。具体的には古物商・警備業・探偵業などがあります。
特に古物商は認可を受けずに開業する人もいるので、前もって断るサービスは多いでしょう。
1-3 実務を行う事務所が必要な職業
有料職業紹介業・労働者派遣事業・産業廃棄物収集運搬業および処分業もバーチャルオフィスの使用を禁止するサービスがあります。
1-4 犯罪に利用される恐れのある職業
犯罪につながる可能性がある職業も、バーチャルオフィスで行うと後で問題になる場合があります。たいていのサービスでは、申し込みも禁止しています。
具体的にアダルトサイト・出会い系サイト・マルチ商法・ネズミ講・ギャンブル・情報販売業などがあります。また暴力団関係者や反社会的団体に属する人はどのような職業であっても、バーチャルオフィスの利用を禁止とするサービスがほとんどです。
2 自宅開業できる業種でもバーチャルオフィスが使えないものがある
個人事業主として開業する場合、オフィスを借りるとコストがかかるので自宅開業するケースは多いでしょう。
しかし賃貸物件の場合、事務所としての使用を禁止する場合があります。このような場合には、バーチャルオフィスの住所を使って登記などをすることになります。しかし業種の中には、バーチャルオフィスでは許認可が下りなかったり登録ができなかったりするケースがあります。
営業許可が下りない業務をバーチャルオフィスを使って行うと、あとで問題になります。どのような業種がバーチャルオフィスは使えないのかをご紹介します。
2-1 人材紹介業(優良職業紹介業)
人材紹介業の許認可申請には、許可要件というものがあります。そのひとつに、事務所に関する要件があるのですが、バーチャルオフィスはその要件を満たしません。
事業所に関する要件には、次の3つがあります。位置が適切であることと事業所の面積が20㎡以上あること、個人情報などを保持し得る構造であることです。ただし、個室の設置やパーティションなどによる区分があること、あるいは他の求職者または求人者と同室にならずに対面の職業紹介ができれば、20㎡の面積要件を満たさなくても良いとしています。
いずれにしても、個室を割り当てられないバーチャルオフィスでは人材紹介業の許認可申請を行うことはできないことがわかります。もし許可を受けることなく事業を行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられるので注意しましょう。
2-2 税理士
税理士になるための資格を取ることができても、実際に開業するためには税理士事務所登録申請書というものを税理士会に提出しなければなりません。その書類の中に、税理士事務所設置に関する書類があります。
この書類には、賃貸借契約書の写しと税理士事務所設置同意書、間取り図があります。実際に事務所として借りるスペースがないバーチャルオフィスでは、この間取り図を提出することができません。
しかしバーチャルオフィスには、会議室として利用できるスペースがあります。バーチャルオフィスも賃貸借契約書は用意できますし事務所設置同意書も業者によっては用意してくれるかもしれません。
しかし常時使用していない会議室を利用して申請すると、後で問題になるでしょう。
2-3 行政書士
行政書士は開業にあたり、日本行政書士会連合に対して開業手続きを行います。提出書類の中には事務所に関するものもあります。
そして大事なことは、書類を提出したあとに、事務所として問題ないかどうかの調査があります。
業務取扱上の秘密を保持できるか、ほかの業者との独立性が確保されているか、あるいは看板を出しているかなどを確認します。
この時点で、バーチャルオフィスの場合には実際に使える事務所スペースがないので、審査が通らないことになるでしょう。
もちろん登録住所だけバーチャルオフィスにしておいて、実際の業務は自宅で行うということはできません。あくまでも登録している住所で業務を行うことが条件だからです。
2-4 社会保険労務士
社会保険労務士は営業許可を取るための申請に、事務所に関する要件はありません。おそらくバーチャルオフィスを使っての開業は可能かと思います。
しかし顧客に関する秘密情報を扱う業種なので、その管理がきちんとできる事務所で業務を行わなければ問題が発生する可能性はあります。
2-5 古物商
中古品の売買業を行うならば、バーチャルオフィスは利用できません。もちろん副業で行う場合でも同じですが、「古物商許可」を取る必要があるからです。そしてその古物商許可を取るためには、必要書類のひとつとして営業所となる場所の賃貸契約書の写しが必要になります。
さらにその賃貸物件のオーナーあるいは管理会社から、賃貸物件で古物商を行うための仕様承諾を得ることも必要です。つまり、営業所として実態のある場所がないバーチャルオフィスでは、許可を取るための書類を用意できません。
もちろん、許可を得ずに古物商を行うと、違法な営業であるとの容疑で処罰されるので注意しましょう。その場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金を処されます。
中古品の売買をネットを使って行うことは簡単なので、許可が必要であることを認識せずに副業をしている人もいるかもしれません。そのような人がバーチャルオフィスを使って開業しようとすると問題が発覚するので注意しましょう。
おわりに
こうしてみるとバーチャルオフィスで利用できない職業が割と多いことがわかります。しかしその共通点を考えると、違法性の強いものと事務所スペースを用意しなければ許認可が下りないものと2通りあることがわかるでしょう。
前者は当然のことですが、後者での開業を考えている方は、バーチャルオフィスの利用には注意しましょう。