バーチャルオフィスは実際にオフィススペースを借りることなく、住所だけを利用できるサービスです。
つまり利用者としては、どの住所を選べるのかが大きなポイントになります。そこで、バーチャルオフィスはどのような地域で多く提供されているのかを調べてみました。
目次
1 調査方法について
バーチャルオフィスの地域調査にあたっては、いくつかの業者を選択して東京で展開している拠点数をカウントしました。そこからバーチャルオフィスの多い地域を調べています。
さらにそのエリアに見られる特徴を調べ、どのような要素のある地域で多くサービス展開しているのかを分析しました。
2 東京におけるバーチャルオフィスが多いエリア
調査した業者数は14社、それぞれが東京でバーチャルオフィスを展開しているエリアをカウントしました。結果は以下のようになります。
- 港区 41
- 中央区 37
- 渋谷区 22
- 千代田区 16
- 新宿区 13
- 品川区 10
- 豊島区 8
- 台東区 3
- 江東区 1
- 墨田区 1
- 世田谷区 1
- 中野区 1
このように見ると、明らかにエリアが集中するエリアと、拠点が展開されていないエリアが明確であることがわかります。
まず都心5区がみごとに上位を占めています。都心5区は日本の政治・経済・ビジネスが集中しているエリアです。
企業が拠点を持ちたがるエリアでもあり、バーチャルオフィスもしっかりとカバーしています。続いて都心5区に隣接する城東・城北エリアから台東区・豊島区・墨田区が、城南・城西エリアから品川区・世田谷区・中野区が少数ながら入っています。
この結果から、バーチャルオフィスが多い地域は、ビジネス拠点として人気のエリアであることがわかります。
3 バーチャルオフィスが多い地域の特徴とは
続いて、これらの地域に見られる共通点について分析してみます。そこで上位3エリアのオフィス街としての特徴を挙げていきます。
3-1 ビジネス拠点として不動の人気を誇る港区
港区は立地を見ると、中央区・千代田区・新宿区・渋谷区・品川区・江東区に隣接することから、ビジネス拠点として人気のエリアになります。
麻布・赤坂・白金・高輪といった高級住宅街を擁していますが、そのネームバリューゆえに知名度の高さは抜群といえるでしょう。さらにビジネスマンの街としても有名な新橋・虎ノ門もあり、オフィスビルも多く建ち並んでいます。
交通面においても、地下鉄の銀座線・半蔵門線・大江戸線といった都心の中心を通る複数の路線が使えることから、アクセスに関しても申し分ありません。
上場しているインターネット企業の所在地を調べてみても、東京23区の中で港区には33%もの企業が集まっていることがわかります。六本木にはユーチューバー事務所のUUUMがありますし、港区には外資系IT企業も集まっています。
3-2 賃料相場ナンバーワンの中央区
中央区は丸の内・大手町・有楽町など数多くの企業ビルが集まるビジネス街です。オフィスのテナント需要が極めて高く、過去10年にわたり新規テナント需要の人気第1位となっています(2017年時点)。
ビル開発においても都心エリア内で第2位の成長度を誇り、賃料相場も圧倒的に高いことが特徴です。
日本橋・京橋エリアは大型ビルの開発が進み、オフィスと店舗が混在する形で発展が期待できます。また八丁堀や人形町エリアには中小規模のオフィスが密集し、バーチャルオフィスもこのエリアで多く提供されています。
交通アクセスにおいてもターミナル駅である東京駅を擁し、地下鉄もほとんどの路線が利用できるとあって抜群のエリアといえるでしょう。
3-3 コワーキング化が進む渋谷区
Google Japan本社が六本木から移転したことでも注目された渋谷区は、港区に次いでIT企業が多く集まるエリアでもあります。渋谷は起業家が集まるエリアとしても注目されますが、都心5区の中でもコワーキングスペースおよびシェアオフィスの数が2013年と2017年で第1位となっています。
渋谷の再開発を進める東急電鉄は渋谷ヒカリエ・渋谷キャストなどの商業施設にも、コワーキングスペースを確保しています。多くの路線が乗り入れるターミナル拠点であることも、オフィス需要の高さにつながっています。
4 エリア分析にみるバーチャルオフィスの人気エリアの共通点
バーチャルオフィスが多く集まる地域はビジネスの中心地でもあることがわかります。そしてそのエリア分析をすることで、バーチャルオフィスに求められる共通点も浮き彫りになります。
4-1 交通の便が良い
バーチャルオフィスは実際にオフィススペースを借りるわけではありません。あくまでも会社の所在地として登録できるだけのサービスといってもよいものですが、実際には交通の便が良いエリアが多いことがわかります。
これには2つの理由があると考えられます。まずバーチャルオフィスは実在する営業拠点としてアピールする必要があるので、その利便性の良さは対外的に説得力を持つということです。
たとえ一等地にオフィスを構えたとしても、業種によっては交通の不便な場所となるとあまり良いイメージを与えません。
また顧客との打ち合わせが必要となれば、実際にバーチャルオフィスのあるビルで顔を合わせることになります。その際に交通の便が良ければ、顧客に対しても良いイメージを与えることになります。
4-2 起業家が多く集まる
港区や渋谷区には、実にIT企業の6割が集まっています。それに伴ってスタートアップ企業も集まり、起業を目指す人の人気エリアとなっています。
このエリアで開業することは、IT企業の多いエリアを拠点としていることをイメージさせることから、他のエリアで開業するよりも高いアドバンテージを持つことにつながります。
さらに起業家のオフィス需要を受けて、渋谷のようにコワーキングスペースを増やす傾向も見られます。このような流れの中で、バーチャルオフィスも増えていると考えられます。
4-3 再開発エリアが多い
オフィス街の中で再開発が多ければ、新しいオフィスビルも多く建設されることになります。そのような新しいビルでバーチャルオフィスを提供するサービスも増えています。
森トラスト株式会社の2018年4月における大規模オフィスビル供給量調査レポートでも、2018年から2020年にかけてオフィスビルの増加を示しています。
具体的には東京23区における2018年の大規模オフィス供給量は147万㎡と、過去20年間の平均である105万㎡を上回っていることがわかります。
エリアをみると2018年から2022年は都心3区で供給量の7割を維持するとしています。中でも大手町・丸の内・有楽町の中央区エリアが最も多くなっています。
4-4 オフィスビル供給量が多い
最後に当然のことですが、大規模オフィスビルの供給量が多いことも共通していることがわかります。森トラスト株式会社のレポートによると、2013年から2017年における区別の供給量は、以下のようになっています。
- 千代田区 157万㎡
- 港区 108万㎡
- 中央区 78万㎡
- 品川区 27万㎡
- 渋谷区 26万㎡
- 新宿区 19万㎡
供給されるビルが多いほど、バーチャルオフィスの割合も増える傾向にあることは明確です。ここで注目したいのが渋谷区です。
オフィス供給量は都心3区と比べてひとケタ違いますが、バーチャルオフィスの数は3番目に多いエリアとなっています。これは需要の多さを反映した結果とみてよいでしょう。
おわりに
バーチャルオフィスの多い地域について調査・分析をしましたが、実際のオフィス需要の多いエリアとリンクすることがわかります。また起業家が集まるエリアも、オフィスビル供給量に関わらず多いことも特筆すべき点かと思います。
また再開発に伴い、オフィスビルの建設が多いエリアでは、今後さらにバーチャルオフィスが増える可能性があると考えてよいでしょう。
個人起業・ノマドワークやネット通販・副業などのスモールビジネスが今後どんどん盛り上がっていくと思われますので、どんな場所に新しいバーチャルオフィスができるのか、今後のバーチャルオフィスに注目です。